虫垂炎は俗に「盲腸」や「盲腸炎」と呼ばれる疾患で、その原因は明らかではありませんが、大腸の始めの部分である盲腸部から垂れ下がる虫垂と呼ばれる袋が細菌感染を起こしたため、虫垂に化膿性の炎症が生じたものなのです。
症状は、まず吐き気や嘔吐を伴う上腹部の痛みから始まりますが、その痛みは時間の経過とともに次第に右下腹部の方へと移り、痛みの部位が明確となって熱も出てきます。
虫垂炎は、比較的若年層に多い疾患ですが全ての年齢層で発症し、治療は外科的手法による虫垂切除術および抗生物質や抗菌剤などの投与が行われます。
感染症は、ウイルスや細菌などにより引き起こされる疾患で、私たちは白血球を中心とした免疫機構により、それら病原体を攻撃・排除しています。
特にリンパ球に属するNK細胞(ナチュラルキラー細胞)は、ウイルスや細菌をいち早く発見し、他の免疫系の指令を必要とすることなく単独で即座に病原体を殺傷します。NK細胞は別名「生まれながらの殺し屋」とも呼ばれ、他の免疫細胞の攻撃を免れた病原体をも攻撃するのです。
そしてその後、病原体を貪食した樹状細胞やマクロファージからの指令を受けたヘルパーT細胞やキラーT細胞などがNK細胞に追随する形で病原体を攻撃することとなります。
また好中球は細菌やカビなどを殺傷するとともに、リンパ球の一つであるB細胞はヘルパーT細胞の命令を受けて、その病原体(抗原)に対する抗体を産生し、その抗原の働きを止めてしまうのです。
最新の研究で鍼灸治療は、NK細胞・T細胞などのリンパ球を増加させ、それらの血液中への移行を促進する作用を示すとともに、その活性化を強く促すことが証明されています。
さらに、鍼灸治療はB細胞による抗体の産生能力を高めるだけでなく、ストレスなどによる免疫抑制に対する防止効果も有しているため、様々な感染症の治癒を可能とするのです。
それゆえ鍼灸治療は「虫垂炎」の症状である右下腹部痛や上腹部痛に対し、鍼灸治療の持つ鎮痛作用で痛みを緩和するとともに、胃の運動機能調整作用により吐き気や嘔吐を抑制、また消炎・抗炎症作用を用いて虫垂部の化膿性炎症や、それによる発熱を改善するのです。