すでに学んでいただいた通り、エネルギー源となりうる栄養素は、三大栄養素の<炭水化物> <脂肪> <たんぱく質>ですが基本的にはまず「糖質」である炭水化物と「脂質」である脂肪が、主にエネルギー代謝に利用されます。
そして、私たちの身体には複数のエネルギー産生システムが備わっていますが、どの栄養素を利用するとしても、運動の担い手である筋肉が直接使うエネルギー源はATP(アデノシン三リン酸)というそれらから作り出された物質であり、そのATPが代謝されていく過程でエネルギーが生み出されていくということだけは共通しているのです。
ATP(アデノシン三リン酸)はアデノシンという物質にリン酸基が3つ連なってくっついた化合物で、安静時には筋肉内に貯蔵されています。
そして運動時にはそこからリン酸基が1つずつはずれエネルギーが生み出されるという仕組みです。
ATP(アデノシン三リン酸)からリン酸基が1つはずれるとADP(アデノシン二リン酸)となり、約 7~8 Kcal/molのエネルギーが産生され筋肉の収縮を可能にします。
しかし筋肉に貯蔵されているATPは少なく運動を始めるとわずか数秒で枯渇してしまいます。
そこで私たちの身体にはATPを再合成する機構が備わっているのですが、それには3系統あり〈CP系〉〈乳酸系〉〈有酸素系〉という、それぞれ特徴的なシステムが存在します。
そしてその反応には、酸素を使うものと使わないものがあり、それぞれ「好気的」「嫌気的」と言う表現がなされます。
〈CP系〉
最も早くATPを供給するシステムで、筋肉内にあるクレアチンリン酸(CP)が、クレアチンとリン酸に分解され、ADPとそのリン酸が結合することにより、ATPが再び合成されるという酸素を使わないエネルギー代謝過程です。
しかし、筋肉内に貯蔵できるクレアチンリン酸の量は少なく、これもまたすぐに枯渇してしまうため、その運動は十数秒の間しか続けることが出来ません。
重量挙げや100m走 など、短い時間に大きな力を出す運動をするときに働き、それらは無酸素運動と呼ばれています。
〈乳酸系〉
CPが枯渇したあとに、筋肉や肝臓に貯蔵されているグリコーゲン(糖質)を分解して、ATPを再合成するエネルギー代謝過程ですが、それには「嫌気的解糖」と「好気的解糖」があり、乳酸系はそのうちの「嫌気的解糖」による合成過程をさします。
グリコーゲンは本来、酸素と完全に反応すると、二酸化炭素と水に分解されますが、400m走 など中程度の運動は無酸素運動であるため、酸素が不足してしまい「嫌気的解糖」がなされた結果、乳酸という疲労物質が生じてしまい、それが筋肉内に蓄積されると数分で運動が出来なくなってしまうのです。
〈有酸素系〉
その字の通り豊富に酸素を用いてATPを再合成するエネルギー代謝過程で「好気的解糖」によりグリコーゲンが分解されるため乳酸が生じず、長く運動を継続することが可能です。
そして有酸素系は糖質のみならず、脂肪も用いてたくさんのATPを作り出します。
運動を始めると、まず糖質が代謝されていきますが、数分経つと脂肪も代謝され始め、20分を過ぎたあたりからその割合は脂肪が中心になると言われています。
ジョギングやマラソンなどといった有酸素運動と呼ばれる継続した負荷の軽い運動がこれにあたります。
如何ですか、私たちの身体はこのようにして食事から得た栄養素をいろんな方法でエネルギーに変換し活動を行っているのです。
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